前回に続き、大瀬湾内ギンポ岩の若い個体。前回の個体ほどではないものの、コイツもイイ色をしている。赤色と言うよりは赤茶色かな…。
ここのコケギンポたちは、期待していたよりも大人しかった。大人しすぎると言っていいかもしれない。そもそも、岩と言うよりは石と言ったほうがいいような小さなギンポ岩に、このとき数えただけでも8個体が棲んでいるという環境のせいなのだろうか、井田ギンポゾーンなら、完全に相手を意識する距離感に他個体が居ても静かなものである。
また、井田の卵を守る個体たちは、一所懸命に胸鰭をパタパタとさせて、巣穴の中に新鮮な海水を送り込むような動作を見せていたのに、ここの連中は、静かに穴の中から外を見ているだけという感じなのである。産卵の情報も入っていたのだが、すでにハッチアウト済み?…だとしても、情報からのタイミングを考えると、ちょっと早すぎるような気がしないでもない。
コケギンポ科 / Chaenopsidae
コケギンポ / Neoclinus bryope (Jordan et snyder, 1902)
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雄の撮影&観察をしていたら、雌が同じ巣穴の中から出てきたことがありました。かなり長いこと、その個体を見ていたのですが、雄が巣穴に入っていくところは見てません。ず~っと入りっぱなしだったんでしょうね。
コケギンポがどれぐらいの期間同じ定住するかですが、僕の観察では、最長5年間という記録があります。大瀬の湾内に居たとても大きな個体でした。
井田の場合は、巣穴のある岩のサイズが小さい上に、浅場ゆえに台風で地形が変わってしまうようなこともしばしばなので、あまり数多くのデータは取れていないのですが、それでも、1年間以上同じ巣穴に居る個体も居ます。やはり、小さな個体は移動する可能性が高く、大きな個体は居座る可能性が高いですね。
同時に謎の失踪例もけっこうあります。なぜか居なくなってしまうんですよね。
あと、井田では、大量のニジギンポがそのゾーンに住み着き、それまでそこに居たコケギンポたちが居なくなってしまったということもありました。
赤沢の春はコケギンポ、夏はイソギンポというのは面白いですね。両者の生息水深は微妙に重なりつつもコケギンポの方がチョット深いということが多いのですが、いろんな要因で水深による棲み分けがされていないゾーンでは、そうゆうことが起こるのでしょうね。繁殖期も重なりつつもコケギンポは春寄りでイソギンポは夏寄りですよね。繁殖期は気合が入っているでしょうから勢力としても強くなるのかな。
そういえば、井田にはホシギンポが産卵する穴があるのですが、今はその周辺にも姿すら見えないようです。ここのホシギンポの場合は繁殖期とそうじゃないときで生活場所が違うのかなと思ったりもしてます。
東伊豆の赤沢というポイントには巨大コケギンポがいます。
港のコンクリートの穴に何匹か住み着いているのですが、皆大瀬のコケギンポの3倍くらいはありそうな大きさです。
その穴は夏になるとイソギンポのすみかになるのですが、その間コケギンポ達はどこに行くのか謎なのです。
オスは産卵期は基本的に穴から出ないようですが、matsukawaさんが観察されているコケギンポのオスは、産卵期が終わっても次のシーズンまで同じ穴にいるのでしょうか?
同じ種類でも個体ごとにそれぞれ個性があって面白いですよね。
人間模様と重なり感情移入してしまう事もしばしばです。。。(笑)
>産卵しないで出て行ってしまったことがありました
これは、コケギンポの場合もありそうです。
僕は輸卵管までは確認できなかったのですが、雌の穴の中にいる滞在時間の違いが気になりました。
穴に入って数秒で出てきてしまう場合と、10分間近く穴の中に居る場合があるんです。
穴の壁面に卵を産み付けるというコケギンポの場合、けっこう時間をかけて産み付けていくんではないかと思うんです。…で、そこに雄が放精して受精させるというヘビギンポの産卵のようなスタイルではないかと…。
魚の産卵というと、産卵&放精を、「せーの」で同時というイメージを思い浮かべてしまうんですが、考えてみればそうではないパターンも多いんですよね。
そう考えると、短時間で穴から出てきてしまう場合は、産卵していないだろうという推論にいたりました。
>コケギンポでもモテるオス、モテないオスがいるんですね。
居ますねえ。
なんと言うか、見ていると、モテない雄は詰めが甘いというか不器用な感じがします(笑)。思わず「そこはそうじゃないだろ!」とか、声をかけてしまったりしてしまいます。求愛ダンスまではイイ線いってたりするんですけどねえ…。
雄が卵を守るわけですから、雌としてはイイ雄を選びたいんでしょうね。住まいも含めて…(笑)。
トウシマの場合ですが、メスがオスの穴に入っても産卵しないで出て行ってしまったことがありました。
これはもしかしたら、産卵を控えたメスがどのオスを相手に選ぶか調べているのかもしれない、と思っています。
今月私が大瀬で見たメスがオスの穴から出て行った様子も、もしかしたらそんな行動だったのかも?しれません。
ちなみにその時のオスは、岩の沖側のてっぺん付近にいる、あの中では一番大きいと思われる個体です。
産卵前のメスの大きなお腹がオスの穴から出た後にへこんでいれば、確実に産卵していると思いますが、穴から出てきた様子しか見られないと、その辺の判断は難しいかもしれませんね。
ちなみにトウシマの場合は、確実に産卵した時は、産卵直後は輸卵管がぷっくりふくれていました。
コケギンポでもモテるオス、モテないオスがいるんですね。
トウシマもすぐ側にオスがいたのに(15センチ位しか離れていない)、わざわざ隣の岩に出張して産卵したメスがしました。
その後フラれたオスが隣の岩に引っ越しをしたのには笑ってしまいました。
メスがオスを選ぶ基準って何でしょうね?
是非コケギンポに聞いてみたいところです。(笑)
すみません、コケギンポの話になると長くなってしまいます。。。
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"Diver's High Blog"を御覧いただきまして、ありがとうございます。
大瀬崎や井田の海の中は生き物達の楽園。
ここで見られる魚は、600種とも700種ともいわれています。
そんな海での一コマから、海の素晴らしさのほんの一部分でも紹介できたらと思います。
ちなみに、各エントリーのタイトルが掲載画像の生物名になっていますが
書かれている文章は、必ずしもその生物に関することだけではないので悪しからず…
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